筑波大学大学院に留学したミャンマー人の日本滞在体験記

ミャンマー人はなぜ日本へ行くか

         ミャンマーは2015年まで軍事政権を敷いていて閉鎖された社会でした。つい5年前にミャンマーの社会は大きく変わりました。自由に海外へ行くこともできるようになって、ミャンマー人たちは日本に行くとお金持ちになれる、日本にいる人たちはみんなお金持ちで楽な生活、羨ましい生活をしていると考えるようになりました。実際はどうか知らなくても、多くの人がそうだと信じています。

目次

  1. 日本へ行く目的
  2. 稼いだお金の使い道
  3. まとめ

1.日本へ行く目的

ほとんどのミャンマー人が日本に行きたい理由は技術よりお金が目的です。中には、日本の技術力を身に着けたい、勉強したい人もいるかもしれませんが、そのような人はごく少数です。

実際私は留学する人たちの書類を準備する仕事をしていたとき、学生たちにどうして日本に留学したいか、なぜオーストラリアに留学しないのか聞きました。彼らは「日本はアルバイトができるけれど、オーストラリではアルバイトを正式に許可しないから」と言いました。みんな日本で少し勉強しながらお金を稼ぎに行くのです。

技能実習生で日本へ行きたい人たちも日本の技術を学ぶことは目的でなく、より多くのお金を稼ぎたいのです。ミャンマーより日本の給料は高いし、ミャンマーで働き続けていてもお金は貯められないので、若い時に日本へ出稼ぎに行きたいのです。そして、それを商売にする日本の会社がたくさんあります。

またそんな考えをさらに押すのは親たちです。自分の子供たちが地元を離れてミャンマー国内の遠い所に仕事しに行くと心配するのに、海外で仕事するのは心配しない親が多いです。不思議なことだと私は思っていますが。

日本学生支援機(JASSO)のデータを見ると、軍事政権の時のミャンマー人留学生数はASEAN諸国8か国中6位、5位と低かったのが、経済開放した後の2017年には3位になり、人数も5倍近くに増えています。

(出展 日本学生支援機構(JASSO)外国人留学生在籍状況調査結果)

また同じくJASSOの資料によると、ミャンマー人留学生の収入に占めるアルバイトの率は断トツにほかの国より高いことが分かります。

東南アジア私費留学生の月収の内訳
(出展日本学生支援機構(JASSO)私費外国人留学生生活実態調査2016年)

2.稼いだお金の使い道

           技能実習生や留学生として日本にいるミャンマー人のほとんど全員が、自分たちが稼いだ給料のほとんどを親に送金してしまいます。自分のためにお金を使わず、ほぼ全額送金してしまうので、万が一お金が必要な時は困るそうです。それでもほぼ全額送金してしまいます。

私の生徒たちもそうでしたが、全額送金して親に貯金してもらうのです。もし日本で急にお金が必要になったら、友達から借りてあとで返すのだそうです。自分が困っても家族が困らないように全額送金してしまうのです。

しかし親の中には子供が働いて日本から送金したお金で仕事をしない親もいます。タイで働いた私の友達は給料を全額母親に仕送りしたのに、母親はそのお金を生活や孫の学費に使ってしまい、貯金しなかったそうです。ですからその人は今、日本にいって働き続けるために留学生になっています。

ある私の生徒はアルバイトをしながら日本語を勉強していました。日本での生活は苦しく、日本語学校を修了して帰国しようとしたら、母親が帰国しないで日本に残ってもっとお金を稼いでほしいといったそうです。その理由はその母親の経営する洋服屋を大きくするためだったそうです。

勿論全額親に送ってしまう人ばかりではありません。高度人材として日本で働く人たちは生活費と貯金分以外を家族に送るという人が多いです。日本でエンジニアとしてITの仕事をしている友人は、自分の将来のために貯金し、家族がどうしてもお金が必要なときだけ送金するといっていました。

シンガポールで介護の仕事をした人は安い給料のほぼ全額の100万チャットを親に送金していました。しかし彼女より二倍ほどの給料の高度な仕事をしていた人は親に50万チャットしか送らなかったそうです。教育をうけて自分で判断する力のあるミャンマー人は、親のいうとおりに全額送金する人の割合が低くなるようです。またそういう人たちの親も子供たちからお金をもらうことに頼らないのかもしれません。

3.まとめ

       ミャンマーの文化では勉強ができる子供が賢いいい子とはいわず、親のためにお金を稼いでくれる子供が賢くいい子だと思う傾向があります。ですから、親も子供に沢山のお金を送金することを期待し、子供たちも自分のためにお金を使わず全額親に送金することを当たり前と考えます。ミャンマーにいては親孝行ができないので、多くがお金のために日本を目指すのです。

著者 テッテアウン